工大生のメモ帳

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小説の神様 感想

※ネタバレをしないように書いています。

小説は、好き、ですか?

情報

作者:相沢沙呼

あらすじ

学生にして作家デビューを果たした千谷一也。しかし、発表した作品は酷評で売上は振るわない。

そんな彼の前に現れた、同い年の人気作家 小余綾詩凪

二人は企画として持ち上がった企画として合作の創作に取りかかる。

物語を作る小余綾

文章を書く千谷

しかし、千谷は小余綾の重大な秘密に気がつく。

感想

自分は腐っても文藝部の部長であり、小説は大好きで、下手っぴながらも必死こいて小説執筆に明け暮れる毎日を送っている。

そんな小説が好きな人にこそ読んで欲しい本作。主人公は学生にして作家としてデビューした。小説を執筆したことのある人ならば一度は夢見ることだろう。その夢を若くして成し遂げた彼は、作品の売り上げの少なさとネット上に書き込まれる酷評の嵐に苦しむことになる。

自分の作品なんて……と卑屈になる彼。売上が全てだと数字理論を振りかざす彼の姿勢は作家として、いや人として正しいのだろうか。そんな彼が最後に選ぶ道は読んで確認して欲しい。

 

一方対照的に描かれていく小余綾詩凪という人間は、自分の作品が数字を得ることができていないとしても、待っている人はいるはずと幾度となく彼に告げる。

だから、作品を書いて欲しい。

合作も成功させたい。

彼女は何度も何度も……まるで自分に言い聞かせでもしているかのように。

彼女の抱えている秘密。その秘密という物は小説家にとっては、あまりにも残酷すぎるものであった。

小説の神様―果たしているのだろうか。このタイトルの真意を考えて読み進めていくともっと楽しめるかも知れない。

 

小説執筆という特殊な舞台上で繰り広げられる登場人物達の葛藤。言いたいことを言い合って、ぶつかり合っていく。

紡がれていく物語はあまりにもきれいで、美しかった。

小説が無性に書きたくなりました(書けるとは言っていない)。

小説の神様 (講談社タイガ)

小説の神様 (講談社タイガ)