工大生のメモ帳

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世界の終わり、素晴らしき日々より2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

たとえ世界が終わっても

情報

作者:一二三スイ

イラスト:七葉なば

ざっくりあらすじ

終わってしまった世界でトラックに乗って旅するコウとチィ。

度の途中で出会った上野に誘われて二人が向かったのは、消失を免れた人々が住むコミュニティだった。夏祭りの準備のために賑わいをみせ、切ない恋心を抱いて生きていた。

そんな中、謎に満ちたコウの過去を知る人物が現れた。

季節は夏。太陽は燦々と照りつけてくる。

そこでコウとチィ、二人が見たものとは――

感想などなど

完全に予想外だった。続編があるにしてもコウとチィの二人がただ淡々と銃撃戦の中をくぐり抜け生きていくのだと思っていた。

終わってしまった……人が消失してしまったのはあくまで背景に過ぎない。そんな世界で人々は普通に生活しているのだ。

まぁ、全人類がいなくなったわけではないのだし、人は群れるものである。コミュニティが存在するというのは一巻の途中から明言されていたし、別に疑うようなものでもない。

物語の展開として二人がそのコミュニティに参加するとは思ってもみなかった。これからも二人で一緒に生きていく、と思っていた。

その結果、人々が消えてしまった終わってしまった世界を背景に展開される青春物へと物語の姿は変わっていた。

コウとチィは入ることになるコミュニティで学校に通うことになる。そこでは学生が勉学に勤しみ、休み時間にはグラウンドを駆け回る。今、自分たちの生きている世界でも当たり前の日常が過ぎ去っていく。

しかし、世界は終わっている。だからこそグラウンドの片隅の部活小屋に血だらけの男がいたりする。人殺しの香りがする。

海に行ってキャンプして、ボール遊びに興じ、風呂にゆったりとつかる。

しかし、世界は終わっている。だからこそ海辺に腰掛け、弾の入っていない拳銃で頭を一発撃ち抜いたりする。

世界が終わっていなかったら……というもしもの可能性というやつをどうしても考えてしまう。

 

一巻がチィの過去に焦点を当てた物だとするならば、今回はコウの過去に商店が当てられた物語である。

物語で度々出てくる、恋だの愛だの恋愛だの初恋だの。生きていれば誰もが普通に経験するだろう出来事が、この “人が消えた” 世界では酷く残酷なものになってしまうことがある。

そしてさらに、人が消える原因は明かされてはいないが、おそらく根底に関わっているのが高国との戦争だろう。

……そう、人が消えていなければ今もきっと戦争は続いていたはずなのだ。

もしも人が消えていなかったら果たしてどうなっていたのだろうか。ここにいる登場人物の内何人が生き残ることができたのだろうか。果たして出会うことなどできたのだろうか。

 

愛だの恋だのといった感情に二人はどのように向き合い、折り合いをつけていくのだろうか。非常に難しいテーマに取り組んだ作品だと思う。読んでいて色々と考えさせられる内容でした。

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